タンパク質模型を自分で作ろう(Tangle Proteins Building Set)(1)
今回紹介するのはこのブログの趣旨にとてもよく合うネタである。

Tangle Proteins Building Set

Tangle
Tangleはこのブログの初期にも登場しているタンパク質の「ひも」を表現するときによく使ってきたプラスチックのおもちゃである(過去エントリー→「ポリペプチドもどき)。左の写真がそのTangleをつなげた「ポリペプチドもどき」であるが、Tangleだけではブラブラしているだけで何か特定の形を作る、さらにその形に固定する、のは至難の業だった。ただ、タンパク質というのはアミノ酸が連なった「ひも」であることを示したり、ぶらぶらで変性しているのを示すのには都合がよい。

今回のセットは、このTangleをベースにしてタンパク質の立体構造を作る一種の教材である。箱を開けると、赤、青、緑、白の4種のTangleパーツ(アミノ酸に相当)と、Tangleでのタンパク質造型を支える透明の棒(水素結合)が入っている。


箱の中身
パーツ(「アミノ酸」と「水素結合」)
Tangleパーツに小さな穴が開いているのが見えるだろう。この穴に「水素結合」の棒をつなぐのだ。

解説書が同封されていて、「タンパク質とは何か」という説明から始まってαヘリックスやβシートなど2次構造についての説明が続く。さらに、実際のタンパク質立体構造に基づく立体構造の組み上げ方が書かれている。それに出ていたユビキチン(76アミノ酸)の立体構造を実際に作ってみよう。

まず、Tangleを76アミノ酸つなぐ。赤:αヘリックス、青:βシート、緑:ターン、白:コイル、となっている。

ユビキチン(76アミノ酸)の「変性」状態
 さらに、αヘリックス、βシートを形成する。

「フォールディング」中間体:2次構造の形成

「αヘリックス」
右は、αヘリックスの拡大写真。
それぞれのTangleパーツには穴が開いていて、ヘリックスを安定化するための「水素結合」の棒をつなげる。

この辺りの細かい部分は実際のタンパク質の立体構造に合うようよく考えられた作りになっている。詳細は次回に解説することにして、先に進もう。
 ユビキチンの立体構造はPDB(Protein Data Bank)の1UBQがベースだ。


実際に立体構造形成、すなわちフォールディングを開始させると、実際には「水素結合」棒をつなぐのがななかか難しい。レゴのようにカチッとはまらず、ひずみがあるとすぐに棒が抜けて飛んでいってしまう。それでも、何だかんだと進めていくと、一応それらしくできた。実際にはαヘリックスとβシートをそれなりに置いて全体をつなげただけで、細部はかなり適当である。
一応完成した「ユビキチン」もどき

PDBのサイトで作成したユビキチン(1UBQ)の構造図を右に付ける。一応雰囲気は出ているかも。



ということで、ひとまずユビキチンの「フォールディング」をやってみた。かなり不安定で、形をもう少し丸っこくしようとしたりするとすぐに壊れそうになる。タンパク質のもつ不安定さを象徴しているかもしれない。

このタンパク質造型セットは、来年度から始まる東工大の学部1年生向けの実演講義での教材を探していた途上でネットで見つけた。Tangleを買い足そうかと探していたら、タンパク質造型用のセットがあったのだ。ちょっと調べた限りでは国内で入手することができなかったので、アメリカamazonから購入。一週間ほどで到着した。

細かいこだわりについては次回に回すことにするが、なかなかに楽しい教材(おもちゃ)である。