マルチファセット・プロテインズ(多面的タンパク質世界)

 

【これから進めたい研究テーマ】

私たちの研究室では最近見えてきた新たなタンパク質の世界を開拓していきます。具体的には、私たちが見出した発見や得意分野を基盤としたプロジェクトを展開します。テーマ例としては以下のような内容があります。興味のある方はぜひ一緒に研究を進めましょう。


・新生鎖に依存したリボソーム不安定化の普遍性と分子機構

 アスパラギン酸(D)やグルタミン酸(E)など負電荷のアミノ酸に富んだ配列の翻訳時にリボソームが不安定化し、その一部では翻訳伸長が途中で終わってしまうことを見つけました(新生鎖によるリボソーム不安定化:IRD→解説記事)。生物はどんなアミノ酸配列でも翻訳してタンパク質を作る必要がありますが、苦手なアミノ酸配列があるということです。この現象は大腸菌で見つけましたが、出芽酵母やヒト培養細胞でも起こることを見つけています。この現象のメカニズム、生物学的な意味を探っています。


・非典型的な翻訳から産まれるタンパク質の多様性

 上記の新生鎖によるリボソーム不安定化(IRD)など非典型的翻訳からできてくるタンパク質はゲノムから予想される既知ORF以外になる可能性があります。実際、最近の私たちのIRD研究の発展から、新規のアミノ酸配列のタンパク質ができてくることが予備的にわかっています。系統的な探索を元にすれば、今まで私たちが知り得なかったタンパク質が見つかってくると期待できます。


・合理デザインタンパク質の細胞内フォールディング機構

 生命は長い歴史の中で必要なタンパク質を進化させてきました。多くの生物が何千、何万種類のタンパク質を持っていることからタンパク質の種類は膨大にも思えるでしょう。しかし、20種類のアミノ酸を並べた際の膨大な配列空間を考えると生物がもっているタンパク質はごくごく一部で、まだまだタンパク質には大きな可能性があります。少し前までは、きちんとした立体構造にフォールディングするタンパク質を合理的にデザインすることは夢物語でしたが、この10年ほどでブレイクスルーが起こり、合理デザインタンパク質(人工タンパク質)は現実に扱えるようになってきています。
 デザインタンパク質には大きな可能性がありますが、フォールディングという観点から設計されていません。そこで、これまでシャペロン研究で培ったノウハウを元に人工タンパク質のフォールディングを追究しはじめています。