新生鎖の生物学
【「新生鎖の生物学」の概念】 細胞内のタンパク質はいきなり完成してはたらくわけではありません。mRNAの情報がポリペプチド鎖へと変換される翻訳過程で、すべて翻訳途上の新生ポリペプチド鎖の状態を経過します。翻訳で合成されたポリペプチド鎖がシャペロンの助けも借りながらフォールディングして機能を発揮するのが基本です。
生命のセントラルドグマの最終段階である翻訳は長い研究の歴史から既に多くのことがわかったと思われていますが、近年になって、新生ポリペプチド鎖を主役とした生命現象が世界中で次々と明らかになっています。例えば、翻訳伸長はコドンに従って淡々と進むとは限らずに途中で一時停止すること、その一時停止が生理的意義をもつことがあります。また、タンパク質のフォールディングが翻訳途上で進行することがあり、極端な場合、アミノ酸配列が同じにもかかわらずフォールディング状況が変わる場合があることも知られはじめています。
そこで、新生ポリペプチド鎖を「新生鎖」と定義して新しい研究分野として設定したのが「新生鎖の生物学」です(2014-2018年度 科研費新学術領域研究 領域代表:田口英樹)(→「新生鎖の生物学」領域HP)。