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三輪つくみの成果がPNAS誌に掲載されました。

細胞に熱などのストレスがかかるとタンパク質の凝集体が形成されます。この凝集体は細胞内に蓄積すると毒性を示すため、どのような生物もシャペロンと呼ばれるタンパク質群が凝集体形成を抑えています。シャペロンにはさまざまな種類が知られていますが、低分子量Hsp(small Hsp)は凝集体に自ら取り込まれて、凝集体をほぐしやすくして他のシャペロンが助けやすくするはたらきを持ちます。私たちは、最近大腸菌のsmall HspであるIbpAというシャペロンがタンパク質凝集に取り込まれるだけでなく、自らをコードするmRNAにも結合してふだんは自身の合成(翻訳)を抑制していることを発見していました。

本研究では、IbpAは自身のmRNAだけでなく、他のHspの合成も司る主要な熱ショック転写因子σ32の細胞内での存在量をも制御していることを発見しました。既に合成されたσ32の安定化や分解によって種々のHspの存在量を調節する仕組みは、20年以上前の研究で確立していたと思われていました。今回の発見したIbpAによるσ32の発現制御機構は、従来知られていた仕組みをさらに厳密に調節して細胞が熱ストレスに素早く対処するよくできた仕組みの一環と言えます。

本成果の概要は東工大ニュースをご覧ください。
→ 東工大ニュース「熱ショックタンパク質発現制御の新たな仕組みを20年ぶりに発見ー熱ストレス応答制御因子を「作る前にストップをかける」調節機構

論文情報

掲載誌 :
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
(米国科学アカデミー紀要)
論文タイトル :
Escherichia coli small heat shock protein IbpA plays a role in regulating the heat shock response by controlling the translation of σ32
(大腸菌の低分子量熱ショックタンパク質IbpAはσ32の翻訳を制御することにより、熱ショック応答を制御する)
著者 :
Tsukumi Miwa and Hideki Taguchi
DOI :